先日、ギャラリーA4で開催中の「建築家・阿部勤のいえ展」を見てきました。 展示の中心には、阿部さんの初期の代表作であり、自邸でもある《中心のある家》の実寸大モックアップが据えられていました。 この住宅は、正方形の平面に対して、1階部分がRC(鉄筋コンクリート)造の壁によって「回の字」に二重に囲まれ、外部と内部を隔てるように「囲う」構成になっています。 その上部には、2階の腰壁から上を取り巻くように水平連続窓が設けられ、木造の屋根がそれらを「覆う」ように架けられており、屋根と窓の関係性が建物全体を包み込むような印象を与えます。 この「囲う」と「覆う」という空間構成、そして外と中を「開く」「閉じる」といった設計操作が、阿部さんの建築の本質を物語っているように感じました。 展示では、そうした建築的な意図が模型を使って色分けされ、非常に丁寧に解説されていました。 ギャラリー中央に再現されたリビング 中心の間では、RCの壁に囲まれながらも、壁芯幅2.1メートルの絶妙な奥行きののダイニングとキッチンが続き、視線の抜けと距離感のバランスがとても心地よく設計されていることが感じられました。 展示にはありませんが、中心の間からテラスを返して見える庭がとても綺麗なのだろうと想像を掻き立てます。 展示スペースには、実際に阿部さんのご自宅で使われていたダイニングテーブルや椅子、調理器具なども並べられており、とてもリアルな展示となっておりました。 やや閉鎖的な「コージーコーナー」にはデイベッドが設けられており、かつて阿部さんご本人が「ここが気持ちいい場所だ」と語っていた映像を拝見したことがあります。 壁で囲われたコーナーで窓から庭を望む光景を想像すると、その言葉の意味がじんわりと伝わってくるようでした。 また、展示の一角には、阿部さんが実際に使用していたデスクや、お気に入りの小物も並べられており、とても見ごたえのある展示でした。しかも、この内容で入場無料というのも驚きです。 「正しく古いものは永遠に新しい」――阿部さんが好んで使っていたというこの言葉の通り、50年の時を経た今でも、阿部さんの建築は斬新で、魅力的に感じられました。
建築家・阿部勤のいえ展 暮らしを愉しむデザイン 昨日は「循環を考える渡邊邸改修Project」の見学会に参加させていただきました。 日本のオーガニックコットンの第一人者であり、一般社団法人サーキュラーコットンファクトリー(CCF)代表理事の渡邊智惠子さんのご自宅をまるごとショールームとし、「捨てられるものを活用したリノベーション」として行われたものです。 改修プロジェクトのテーマは「資源と建築の循環」 できるだけ捨てない、使える物は使う 地球と身体に良い物を使ってつくる という理念のもと、繊維廃材を建築に活かす多様な工夫が施されていました。解体は最小限にとどめられ、産業廃棄物の発生を抑える工夫が随所に見られました。 アップサイクル(廃棄物や使わなくなったものに新たな価値を与えて再利用すること)された素材がふんだんに使われ、渡邊さんのまっすぐな環境への姿勢と、住まいに対するおおらかな愛情が、空間全体にやさしく表れていました。 また、渡邊さんがすべての物は「神様からの贈り物」と表現されていたことも忘れられません。 木も、繊維も、土も、それぞれ自然の循環の中にあり、私たちはそれらを使わせていただいている立場にあり、「建築は、長く愛せるものをつくらないといけない」という渡邊さんの言葉が、心に響きました。 今回の見学で特に関心を持ったのは、サーキュラーコットンボードと繊維由来の断熱材です。 繊維廃材からつくられたサーキュラーコットンボードは、断熱性や吸音性に優れているうえ、加工性・施工性も良好で、画鋲を刺すことも可能なため、掲示スペースのアクセント壁としても活用できます。 90%以上がリサイクル原料という点で、廃棄物削減にも大きく貢献する素材です。 また、セルローズファイバーと同様に使用できる断熱材も紹介されており、性能もセルローズファイバー以上とのことで、とても期待が持てる材料だと感じました。 建築における「環境負荷を減らす」ということは、単にエネルギー効率を高めるだけでなく、素材の選び方やその背景にあるストーリーに目を向けることでもあるのだと、あらためて気づかされました。 今後、このようなアップサイクル素材が多用されていけば、建築の現場にも新しい循環の価値観が根づいていくと思います。 建築は単なる“モノづくり”ではなく、自然と人、そして時間とつながる営みなのだと強く実感しました。 見学会後の懇親会では、主催の結めぐる㈱ 篠崎さんの手づくりによる、体にやさしいお料理がふるまわれました。
とてもおいしく、楽しく、学びのある素敵なヒトトキでした。 このような貴重な体感の場をいただき、本当にありがとうございました。 昨日、伊勢崎市境町の赤レンガ倉庫で開催された「AOFES(あおフェス)」に、娘の中学吹奏楽部が参加するということで聴きに行ってきました。 AOFESは、「伊勢崎はおもしろい。そしてもっと、おもしろく。」をテーマに、音楽や演劇、地元の食などを通じて地域の魅力を再発見し共有するイベントのようです。 この日の出演者は、柿澤秀吉さん、DADANDANさん、松浦たくさん、松川ジェットさん、山口貴大さん、AZALEA PROJECT(劇団)の皆さん、そして娘たちが所属する赤堀中学校吹奏楽部 吹奏楽部もアーティストの一員として、かっこよく紹介されていました。 会場となった赤レンガ倉庫は、今から100年以上前の明治時代に建てられた歴史ある建物です。 かつてこの地域で盛んだった養蚕業のために、繭の保管倉庫として使われていました。 群馬県の重要な産業だった絹産業の歴史を知るうえでも、とても価値のある建物です。 現在ではきれいに整備され、イベントが開催されたり、カフェが入ったりと、地域の人たちが集まる交流の場として活用されています。
この日は、普段の演奏よりもポップでロックな楽曲が多く、吹奏楽部の新しい一面が感じられ、とても素敵な時間を過ごすことができました。 貴重な体験をありがとうございました。 aofes_isesaki 昨日は、マテックス㈱主催による㈱夢・建築工房さんの中古再販住宅の見学と、マテックス社・鳩山センターの見学会に参加させていただきました。 まずは、昨年8月にも見学させていただいた夢・建築工房さんの鳩山ニュータウン再販物件へ。 前回はまだ工事中でしたが、外構までしっかり整い、内外観ともに美しく仕上がった完成形を拝見することができました。 外壁の板張りは、時間の経過とともに風合いを深めており、板塀の佇まいや整えられた植栽とも相まって、落ち着きと上質さを感じる外観でした。 室内も、素材の選定から施工まで非常に丁寧に仕上げられており、築45年以上の住宅とは思えない、まるで新築のような仕上がりでした。 また、2階ホールに設置された冷房用エアコンについて、各室からのリターン換気により空気を循環させる工夫がなされており、1台で十分な冷房効果を発揮できる仕組みになっていました。 岸野社長からは、その施工上の工夫についても詳しくご説明いただき、大変参考になりました。 岸野社長は、自社物件の仕様や採用している工法、社内の取り組みや協力会社との連携の在り方まで、包み隠さずオープンにお話しくださいました。「ライバルではなく、みんなで良いものをつくっていきたい」姿勢に深い感銘を受けました。 その後、マテックス社の鳩山センターへ移動し、今後の製品や環境対応に関する説明と、新工場でのガラスおよびサッシの製造工程の見学をさせていただきました。 一般社団法人ロングライフラボの清水さんからは、地球温暖化の現状や異常気象、そしてそれに関連する研究データなどをもとに、環境問題の深刻さについてお話がありました。「想像以上に早く対策を講じる必要がある」という現実を突きつけられ、改めて環境負荷の軽減に向けた取り組みの重要性を認識させられました。 また、同社の新井さんからは、マテックス社が手がける製品や、会社全体で取り組むリサイクルや環境配慮の姿勢について伺いました。新工場での見学では、環境に配慮した製造プロセスに加え、製品の「良い点」だけでなく「改善すべき点」にも率直に言及されており、その誠実な姿勢に企業としての社会的責任を強く感じました。 見学の合間には、展示ブースも拝見させていただきました。 サッシ部材や高断熱・パッシブハウス仕様の壁断面の実物モックなどが展示されており、実際の構造や素材を目で見て確認できる貴重な機会となりました。新たに知ることのできた建材も多く、今後の設計や施工に活かせる実りの多い一日でした。 住宅の高性能化に関する具体的なノウハウだけでなく、企業としての取り組み姿勢や環境への意識など、非常に多くの学びがありました。
夢・建築工房さん、マテックスさん、そしてご案内くださった皆さまに、心より感謝申し上げます。 ありがとうございました。 |
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