2024年1月1日に発生した能登半島地震の被災地を視察してきました。
M's構造設計の皆さんやゲストの方々、ウッディワールドのざきさんをはじめとする「岡山住まい夢ネット」の皆さんとともに、構造塾マスターコースのメンバー数名で参加させていただきました。
震災からまもなく3年。現在の被災地の状況を、自分の目で見てきました。
珠洲市宝立町
まず訪れたのは、珠洲市宝立町。
この地域は、地震による建物の倒壊に加え、津波によって甚大な被害を受けた地域です。

かつて建物が建ち並んでいた町が、ほとんどなくなってしまっていることに衝撃を受けました。

現在も倒壊したままの建物がいくつか残されており、震災による被害の大きさと、復興の難しさを感じました。

Googleストリートビューで以前の街並みと見比べると、そこには住宅が建ち並び、人々の暮らしがあったことがわかります。

その風景が大きく変わってしまったことに、胸が痛くなりました。

視察中、奇跡的に倒壊を免れた住宅にお住まいの方から、当時のお話を伺うことができました。
地震の揺れの凄まじさ、津波が押し寄せたときの状況、そして現在の町のこと。

中でも印象に残ったのが、避難についてのお話でした。
地域では普段から避難訓練を行っていたそうです。
しかし、実際に地震が起きて避難しようとすると、避難路には倒壊した建物が次々と覆いかぶさり、道路を通ることができなかったとのこと。
わずか130mほどの道を、倒壊した建物の屋根の上を乗り越えながら避難し、約20分かけて高台へ。その約5分後に津波が押し寄せたそうです。

避難経路を決め、日頃から訓練をしていても、耐震性が十分でない建物が倒壊することで、その道そのものが使えなくなってしまう。
建物の耐震性は、そこに住む人だけでなく、周囲の人たちの避難にも関わることを改めて感じました。
輪島市門前町 黒島地区
その後、輪島市門前町の黒島地区へ。
この地区は2007年の能登半島地震でも大きな被害を受け、その後、2009年には国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、町並みの保存と復旧が進められてきました。

板張りの外壁と瓦屋根による統一感のある、美しい町並みが残されています。
一方で、保存地区であることから建物の改修などを自由に行うことが難しく、住民の方々からもさまざまな声が上がっているとのお話を伺いました。
歴史ある町並みを守ることと、そこに暮らす人たちが安心して住み続けられること。その両立の難しさも感じました。
その中にある旧角海家住宅も、2007年の地震で大きな被害を受けた建物です。
その後、土地と建物が輪島市に寄贈され、保存修理が行われました。
お話によると、工事には約5億円がかけられたそうです。
2011年には保存修理工事が完了し、限界耐力計算による耐震診断・耐震設計をもとに、耐震補強も行われていました。

しかし、2024年の能登半島地震では、主屋の大部分が倒壊してしまいました。
一度大きな地震を経験し、耐震補強まで行われた歴史的建造物が、再び倒壊してしまったという現実を目の当たりにしました。


被災地を訪れて
今回、実際に被災地を歩き、被災された方から直接お話を伺い、倒壊した建物を自分の目で見ることができました。
これまでも写真や資料を何度も拝見しておりましたが、やはり現地へ足を運んで初めて感じることが本当にたくさんありました。
視察の前日には、佐藤塾長から能登半島地震による建物の被害や現地の状況について、詳しくお話を伺いました。
その中で、とても胸が苦しくなるお話がありました。
珠洲市宝立町で一人暮らしをしていたお父様を心配し、様子を見に来ていた女性。
2023年の地震後、金沢で工務店を営むご主人に何度も建物の耐震補強について相談されていたそうです。
しかし、補強が間に合わないまま2024年の地震が発生し、女性は倒壊した建物の下敷きになってしまいました。
その時点ではまだご主人と電話で話すことができていたそうですが、その後連絡が取れなくなり、津波によって女性もお父様も亡くなられたとのことでした。
ご主人は、奥様からの耐震補強の訴えをもっと真剣に受け止めていればと、今も悔やまれているそうです。
大きな地震が起こるたびに、多くの方が建物の倒壊によって命を落とされています。
地震そのものは自然災害ですが、人間が設計し、つくった建物の倒壊によって命が失われることは、人災でもあると思います。
自然現象である地震を止めることはできませんが、建物の倒壊による被害は、人間の手で減らすことができるはずです。
建物を設計し、つくる側の人間として、その責任の大きさを改めて感じました。
また、歴史ある建物を残すこと、地域の文化や街並みを守ることは、とても大切なことだと思います。
ただ、そこに暮らす人や利用する人の命を守ることが、何よりも優先されるべきではないかと、常日頃から考えています。
歴史的な建物の価値を残しながら、どのように耐震性を確保していくのか。
そのあたりについても、建築に携わる者として何かアプローチできればと思います。
そして、地震が起きた後も住み続けられる建物をつくること。
今回の視察で見て、聞いて、感じたことを、これからの設計に生かしていきたいと思います。
最後になりますが、このような貴重な視察の機会に参加させていただき、心より感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。

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