昨年末からインフルエンザが猛威をふるい、予防のため加湿が提唱されています。
冬は室内が乾燥しやすく、加湿器を使用する方も多いでしょう。
​そこで、冬の入浴後に発生する浴室の湿気を有効活用し、室内の加湿効果を得る方法を検討しました。
​画像左側は浴室内に風を送る循環ファン

右側は排気時に使用する換気扇です。
排気に使用する換気扇は清掃時や中間期などに使用します。

循環ファンの仕組み
浴室の循環ファンは、浴室の乾燥を促進するために室内の空気を取り込み、風を吹き出して水蒸気を室内に循環させる仕組みです。
​これにより、夏季はエアコンで除湿し、冬季は加湿効果を得ることができます。

また、浴室の入口前にサーキュレーターを置き、浴室内に風を送ることで、循環ファンと同様の効果を得ることが可能です。

サーキュレーターやファンがなくても扉を解放しておくだけでも空気は循環します。

1回の入浴で得られる加湿効果
入浴後に浴室で発生する水蒸気量をSwitchBot温湿度計を元に計算しました。
1回目入浴後(20:39)の浴室温湿度:26.5℃ / 97%(絶対湿度: 24.28g/m³)
リビング(同時刻)の室内温湿度:23.6℃ / 46%(絶対湿度: 9.78g/m³)
絶対湿度g/m³は空気1m³中に含まれる水蒸気量

​絶対湿度差: 24.28g/m³ – 9.78g/m³ = 14.5g/m³
浴室の気積: 1.6m × 1.6m × 2.15m = 5.5m³

水蒸気量:
5.5m³ × 14.5g/m³ = 約80g

浴槽の蓋を閉じ、浴室および洗面脱衣室の扉を開けて水蒸気を循環させると、1回の入浴で約80gから100gの水蒸気(コップ1杯くらい)が室内に循環されます。
​さらに、浴室床面に残った水分(実測で約250g)も数時間かけて蒸発します。

​4回入浴した場合の加湿効果​
4人家族が順に入浴した場合、リビングの温湿度変化を測定しました。(エアコンおよびトイレ換気扇稼働)
1回目入浴後(20:39): 23.6℃ / 46%(絶対湿度: 9.78g/m³)
4回目入浴の40分後(23:00): 23.8℃ / 51%(絶対湿度: 10.97g/m³)
絶対湿度差:
10.97g/m³ – 9.78g/m³ = 1.19g/m³

室内総気積:
288.5m³ × 1.19g/m³ = 約343gの加湿量

また、水が水蒸気に変わる際の気化熱は2442kJ/kgです。したがって、343gの水が蒸発する際に必要な熱量は、
343g × 2442kJ/kg ÷ 1000 = 837kJ
1Whは3.6kJに相当するため、837kJ /  3.6kJ/Wh=232.5Wh
入浴時間を除く1時間位で、約232Wの熱エネルギーを使用せずに加湿効果を得られることがわかりました。

換気扇を使用した場合の損失
浴室の湿気を換気扇で排出した場合の損失を計算しました。

換気量: 60m³/h(1時間運転を想定)
外気温湿度: 5.4℃ / 77%(絶対湿度: 5.37g/m³)
室内温湿度: 23.6℃ / 46%(絶対湿度: 9.78g/m³)

室内から排出される水蒸気量: 9.78g/m³ × 60m³ = 約587g
外気から取り込まれる水蒸気量: 5.37g/m³ × 60m³ = 約322g
水蒸気の減少量: 587g – 322g = 約265g

熱損失: 60m³ × 温度差(23.6℃ – 5.4℃)18.2K × 0.34W/m³K = 約371W

浴室の湿気を室内に循環させることで、約343gの水蒸気を加湿し、232W分のエネルギーを節約できます。一方、換気扇を使用すると、約265gの水蒸気と371Wの熱が失われます。湿気を循環利用することで、冬場の乾燥対策と省エネルギー効果が期待できます。


浴槽の蓋を開けて残り湯のエネルギーを利用
加湿量が多くなるため注意が必要ですが、入浴後のお風呂の残り湯が持つエネルギーを計算しました。

浴槽のお湯の量: 150L(150kg)
湯温の変化: 37℃ → 約23℃(12時間後を想定)
温度差: 14℃
水の比熱: 4.2kJ/kg・K(Kは温度差)

エネルギー量:
150kg × 4.2kJ/kg・K × 14K = 8820kJ

また、水の蒸発潜熱は2442kJ/kgであるため、
蒸発する水量:≒
8820kJ ÷ 2442kJ/kg ≒ 3.61kg(約3.6L)

これにより、12時間で約3.6Lの水分が蒸発します。電気や熱を使用せず、1時間あたり約300gの加湿効果を得ることが可能です。これは、一般的な加湿器を使用した場合とほぼ同等の効果といえます。​


注意点
 浴室の湿気を室内に循環させる時に何点か注意点があります。

  1. カビや雑菌の発生リスク
    汚れた状態の浴室の湿気を直接室内に放出すると、カビや雑菌が室内に広がる可能性があります。
    ​定期的な清掃や除菌を行いましょう。
  2. 結露の発生リスク
    湿度が上がりすぎると、窓や壁面に結露が発生する可能性があります。特に浴槽の蓋を開けたままにすると、加湿量が増えすぎる恐れがあります。
    絶対湿度: 7.2g/m³(6g/kg〔DA〕)~ 12g/m³(10g/kg〔DA〕)程度
    相対湿度: 40%~55%程度
    これらの範囲に湿度を保つことで、結露のリスクを低減しつつ、快適な室内環境を維持できると思います。
  3. 第一種換気システムへの影響
    第一種換気システムでは過剰な水蒸気の影響で配管内が結露する、熱交換素子が濡れてカビが発生する、水蒸気中のカルキ成分が熱交換素子やフィルターに付着しこれが室内に放出されるなどの懸念があります。

ツールの紹介
​絶対湿度を計算する際には、以下のアプリが便利です。温度と相対湿度を入力するだけで、絶対湿度を計算できます。

空気の計算機 – iOSアプリ

湿度計算機 (サイトリンク)

絶対湿度計-iOSアプリ switchbot温度計との連携で便利