住宅デザイン学校 建築視察ツアー2日目。
最初に訪れたのは、新潟県上越市の高田城址公園内にある小林古径記念美術館

ここには、日本画の巨匠・小林古径氏の旧宅が移築復原されています。
1934年に建築家・吉田五十八氏の設計により東京・馬込に建てられた木造二階建ての数寄屋造り住宅で、1993年の解体後、小林古径氏の出身地である上越市へ移築復原され、現在は国の登録有形文化財に登録されています。

印象的だったのは、庭との関係性です。
室内のどこにいても庭の緑を感じることができ、縁側から庭へとゆるやかにつながる空間は、本当に心地よく感じられました。

縁側に腰を掛け、しばらく庭を眺めていると、どこか昔のおばあちゃんの家を思い出すような、懐かしく穏やかな時間が流れます。

建物の南東側には、最も環境の良い場所に客間が配置され、大きく庭へ開かれたコーナーの開口部と、その外側には深い軒下の雨端空間が設けられていました。

縁側や雨端といった内と外をつなぐ「あいだ」の空間があることで、庭との距離がぐっと近く感じられます。

庭から眺める建物の佇まいも本当に美しく、小林古径氏も完成後しばらくは住まずに建物を眺めていたという話が、よく理解できました。

小林古径記念美術館のすぐ隣にある高田城址公園では、ちょうど蓮の花が見頃を迎えており、一面に美しい花が咲いていました。

蓮の花は朝に咲き、昼頃には閉じることを繰り返し、その命はわずか4日ほどといわれています。これほどきれいに咲いた蓮の花を間近で見るのは初めてです。
また、蓮の葉の上では水滴が球状になって転がり、まるで水が踊っているかのようでした。
この高い撥水性は「ロータス効果」と呼ばれ、建築分野でも外壁材などに応用されています。

次に訪れたのは、十日町産業文化発信館「いこて/IKOTE」です。

株式会社フラワーホームが企画・運営する、地域のコミュニティ拠点と飲食店を兼ねた木造施設で、設計は手塚貴晴さん・手塚由比さん(手塚建築研究所)
豪雪地帯である十日町の気候を考慮し、建物は大きなかまぼこ型の木造トラス架構で構成されています。
力強い木組みが建物全体を貫き、内部は開放的な一体空間となっていました。

屋根の両側は開閉できる構造となっており、季節や天候に応じてオープンテラスとして利用できるなど、内と外がゆるやかにつながる心地よい空間となっています。


昼食は館内でいただきました。
地元の食材を使った料理はどれも美味しく、特に新潟のお米は格別でした。

午後は魚沼市へ移動し、伊礼智先生が設計された「魚沼の家」と、堀部安嗣さんが設計された住まいを見学しました。
敷地内には二つの住宅が並び、その間を荻野寿也さんが手掛けた庭が美しくつないでいます。
それぞれ異なる個性を持つ二つの建築が、庭と風景によって一つの美しい景観としてまとまっていました。

まず見学したのは、伊礼先生設計の「魚沼の家」です。
設計された伊礼先生ご本人にご案内いただくという、大変貴重な機会となりました。

外観は、お施主様が吉村順三さんの軽井沢の山荘をイメージして希望された、大きな片流れ屋根と杉板張りが印象的です。
経年変化した杉板が周囲の風景に自然と溶け込み、落ち着いた佇まいとなっていました。


中に入ってまず目に入るのは、南東に広がる田園風景と、川沿いに自生する木々を取り込む大きな木製引き込みサッシです。
開け放つと、景色だけでなく、川のせせらぎやセミの鳴き声まで室内に入り込み、まるで外にいるかのような心地よさが広がります。


建物は豪雪地帯を考慮した四畳半グリッドによる構造計画となっており、中間に柱が配置されています。
柱は圧迫感を与えることなく、空間をゆるやかに仕切りながら、それぞれの居場所をつくる役割を果たしていました。

東側にはウッドデッキが設けられ、ダイニングとは大開口の木製引き込みサッシでつながっています。

ダイニングから眺める景色はもちろん、キッチンに立ったときの眺めもとても素晴らしかったです。
家事をしながらでも、田園風景や川沿いの樹木を眺めることができ、季節の移ろいを身近に感じられる、とても気持ちの良い空間となっています。
お施主様にお話を伺うと、「冬は一面が真っ白な雪景色となり、本当にきれいですよ。」とのことでした。

2階へ上がると、ご家族が日々の暮らしを楽しんでいる様子が伝わる温かな空間が広がっていました。

2階には、高さを抑えた畳コーナーも設けられており、住まいの至るところに居場所がつくられていました。
ここから眺める田園風景もとても美しく、それぞれの居場所ごとに異なる景色を楽しめる住まいとなっていました。

さらに、その上に設けられたロフトも居心地の良い居場所となっており、そこから見下ろす室内や、窓越しに広がる緑がとても印象的でした。

最後に見学したのは、堀部安嗣さんが設計されたフラワーホーム藤田会長のお住まいです。
建物全体を包み込む大きな切妻屋根と、低く抑えられた下屋が印象的な外観です。
外壁板張りの落ち着いた佇まいが周囲の風景に自然と溶け込んでいました。

室内に入ると、約300mm間隔で整然と並ぶ梁を現しとした天井が、空間に力強さを与えています。
壁は白い漆喰で仕上げられ、落ち着きのある洗練された空間となっていました。

こちらの住まいも南側に大きく開かれた開口部が設けられ、庭や田園風景を暮らしの中へ取り込んでいます。

深い軒の下には半戸外空間が設けられ、室内と庭をゆるやかにつなぐ、とても心地よい居場所となっていました。


窓辺にはゆったりと腰掛けられる居場所が設けられ、庭やその先に広がる田園風景を眺めながら、ゆっくりとした時間を過ごせる空間となっていました。

階段や奥まった寝室にも庭を望む窓が設けられ、住まいの至るところから外の景色を感じられる工夫がされています。


庭先には崖地を生かしたウッドデッキが設けられていました。

デッキに立つと、川のせせらぎや風を感じながら、広がる田園風景をゆったりと楽しむことができます。

デッキから眺める景色はもちろん、振り返って見える建物の佇まいも美しく、建築と庭、そして風景が一体となった心地よい空間でした。


2日間にわたり、多くの素晴らしい建築を見学させていただきました。
どの建物も、庭や風景を丁寧に取り込み、住まいの中に心地よい「居場所」がつくられていたことがとても印象的でした。
今回の見学を通して、自分にはまだまだ学ぶべきことが多いと改めて実感しました。この経験をこれからの住まいづくりに生かしていきたいと思います。
このような貴重な機会をいただきました伊礼先生をはじめ、住宅デザイン学校の皆様、そして住まいを公開してくださったお施主様に、心より感謝申し上げます。